HEAD/phones~ヘッド・フォン~
三人はさっそく建物へと向かった。先程の建物と同じくらいの高さに感じるが、それはこの建物が反対側から見えていたからだろう。
健太郎は木で出来た扉に手を触れた。そして、勢いよく開けたが思っていたよりも軽くて後ろに倒れそうになった。けれど、優が後ろで支えてくれたおかげで格好悪い姿をさらさずに済んだ。
「大丈夫か?」
「ちょっと力入れ過ぎただけ」
一歩中に入ると、またあの気味の悪い冷たさが全身を取り囲んだ。健太郎は震える体に力を込め懐中電灯をつけた。
「なんだ…ここは?」
部屋の中を照らした健太郎は声を漏らした。
「何もないな」
優が横に並ぶ。
目の前はまるで宇宙のような、不思議な空間が広がっていた。見つめていると吸い込まれそうな空間だった。
健太郎はその中に自分の姿を見ていた。暗くてねっとりとした闇が、どこか自分と似ているような気がしたのだ。
---「僕の中の黒い部分」
そう思った途端、急に体がだるくなってあの時の記憶が渦を巻くように蘇ってきた。
健太郎は素早く止めようとするが、それは強い力で押し出されていく。それと同時に、まるで膿を出すようなむず痒い不快感が胸の奥を襲う。