HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「……健太郎?」
その声で健太郎の意識は引き戻された。
「どうした?」
優の顔が横にあった。
「…ううん、何でもない」
顔が冷たくなっている。
「なんか顔色悪いぞ」
「全然大丈夫」
健太郎は顔を軽く叩いた。
「そうか…行くぞ」
優はまだ健太郎の顔を見ている。
「う、うん」
本当は酷く気分が悪かったが、我慢して答えた。
三人は何もない部屋を横目で見やりながら、奥にある階段へと向かった。
健太郎はなるべく暗闇に目がいかないように懐中電灯の明かりを見ていたが、何もない所でつまずいてしまった。しかし、また優が腕を握ってくれたおかげで床に叩きつけられずに済んだが、なんだか心がすごく不安定になっていた。
「貸せ」
それだけ言うと優は懐中電灯を健太郎から取り上げ、先に階段へと足を伸ばした。
健太郎は言う事を聞かない自分の体をもどかしく感じた。
---どうしてしまったんだろう?
体のあちこちに隙間が出来て、そこから空気が漏れているみたいで力が入らない。それに感情の制御が出来なくなってきてるみたいだ。まるで自分の体じゃない感じがして、頭の中がすごくむず痒い。