HEAD/phones~ヘッド・フォン~
すごくゆっくりと流れる空間の中、ノブオはようやく少女の前まで辿り着いた。
少女の顔は近くで見ると、なんともつかない表情をしていた。黒い髪は肩まで伸びており、前髪はちょうど目が隠れるくらいまでまっすぐ垂れて、その隙間からチラリと覗く瞳はどこか疲れたような印象を受ける。
背丈は最初に見た時よりも高く感じた。実際ノブオと同じくらいの高さで、白いワンピースから伸びている手足はワンピースの白と同系色でほっそりしており、全体的に透明がかって見える。年齢は分からないが、少女と言うよりは女性と言う方が合っているような気がした。
「どうぞ」
女はそう言うと、壁からコードを引き出した。それは下の階にあったものと同じようだ。白い壁から伸びたコードを手に持って、さらに女は言う。
「それをはめて、そこに横になって」
どうやらヘッドフォンをはめてベッドに横になれという事らしい。
「下にもあったけど、そのコードは何なんだ?」
「すぐに分かるわ」
女はノブオの持つヘッドフォンに手を伸ばす。ノブオは不思議に思いながらもすんなりと女に渡す。
カチャッ。
コードの先端についていた金属部分がヘッドフォンにはめられた。
「すべてが…分かるのか?」
「これはあなた自身への道。すべてはあなた自身で見る事から始まるのよ」
「俺自身?」
「少なくとも、迷いはなくなるでしょうね」
女はノブオにヘッドフォンを差し出した。
「分からない、分からないが…」
---面白そうだ。