HEAD/phones～ﾍｯﾄﾞ･ﾌｫﾝ～

　三人はヘッドフォンを見つめていた。
突然聞こえてきた音に戸惑う健太郎だが、優は案外平気な顔をしている。陽助はヘッドフォンの行方を気にしているようだ。

ヘッドフォンからは三人の沈黙を無視して、音が途切れ途切れに聞こえてくる。

「…ヘッドフォンて…それだけでは音出ないよね？」

健太郎は呟いた。

「そうだな」

「ここで拾ったの？」

「ええ…」

陽助の声はヘッドフォンから聞こえてくる音よりも小さかった。

「ここに来る前だ」

優のその言葉はどこか変な感じだった。
ここに来る前。ここは前にいた所とは別の場所。現在と過去。この場所と前の場所が果たして繋がっているかどうかは疑問だけれど。

「でも、どうして？」

健太郎のその疑問に答えられる者はいない。
そして、三人はまたヘッドフォンを見つめ直す。すると、

「…ガガガガ…ザザ…ザァーー…ザ、しろ…い……ザザ…お…んな…」

音の中から声らしきものが混ざり込んで聞こえてきた。三人は顔を見合せる。