HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「…聞いたか?」
健太郎は二人に確認する。
「ああ」
優は頷く。
「今の、声だったよね?」
「そうだな…」
「何て…言ってた?」
「しろ、がどうとか」
健太郎は謎の声をもっとよく聞こうとヘッドフォンを耳にあてようとした。しかし、優がそれを奪って遮った。
「やめとけ」
「どうして?」
健太郎は不思議に思った。優の顔が強張っていたからだ。
「おかしいだろ?人の声がするなんて」
健太郎はそう言うが、優は何も答えようとしない。
このヘッドフォンは何なんだ?優は何かを知っているのか?でも、それならなぜ何も言わない?陽助だってなんか様子が変だし……だいたい、なんでこんな所にいるんだよ。
優がヘッドフォンを陽助に返すと、音はプツリと消えてしまった。
「あっ」
健太郎は小さく声を漏らした。そして、辺りにはまた静寂が戻った。そのあまりの静けさに耳が痛くなる程だった。三人はしばらく考え込むように黙っていたが、その沈黙を優が破った。
「行こう」
しかし、健太郎はまだヘッドフォンから聞こえてきた音や声の事が気になっていた。
「おい、ノブオ探すんだろ?」
その言葉で健太郎は小さく頷き、やっと足を動かした。
この際、あんなわけの分かんない音なんてどうだっていい!早くノブオを見つけてこの建物から、ここから出るんだ!!
健太郎はゆっくりと階段を上がり始める。それを確かめると、優も足を動かした。…が、突然優は振り返った。
「どうした?」
「陽助がいない…」
健太郎はそれを聞いて急いで後ろを振り返る。そこには優の言う通り陽助の姿はなく、ただ暗黒の闇だけが広がっていた。