HEAD/phones~ヘッド・フォン~
健太郎と優は一旦、建物の外に出た。
「どこ行ったんだ…」
健太郎は息苦しさから解放されホッと息を吐いた。
「あとはノブオだけかと思ってたのに……優?」
優の表情は険しく何か考え込んでいるようだ。
「あのヘッドフォンは…」
優はそこまで言ってやめた。
「何?」
「…もしかして」
考えがまとまらないようで、何が言いたいのか健太郎にはさっぱり分からない。
「何が?どうした?」
健太郎は優の返事をじっと待った。
「とにかく戻ろう」
「とにかくってなんだよ。なんで戻るんだ?」
健太郎が尋ねるが、優はさっさと草の中に入って行ってしまった。
「ちょっと!優!」
置いていかれないように急いで優の後を追いかけた。かき分けた草の先に優の後ろ姿が見えるが、すぐにその姿は消えてしまう。
「優!待てよ。どういう事なんだ??」
しかし、優の声は返ってこない。
やがて、健太郎は草から抜け出し、ようやく優に追い付いた。
「ついて来い」
優はそれだけ言うと、建物の方に向かって歩いて行く。健太郎はもう何も聞かずに黙って優の後に続いた。