HEAD/phones~ヘッド・フォン~

 健太郎と優は一旦、建物の外に出た。

「どこ行ったんだ…」

健太郎は息苦しさから解放されホッと息を吐いた。

「あとはノブオだけかと思ってたのに……優?」

優の表情は険しく何か考え込んでいるようだ。

「あのヘッドフォンは…」
優はそこまで言ってやめた。

「何?」

「…もしかして」

考えがまとまらないようで、何が言いたいのか健太郎にはさっぱり分からない。

「何が?どうした?」

健太郎は優の返事をじっと待った。

「とにかく戻ろう」

「とにかくってなんだよ。なんで戻るんだ?」

健太郎が尋ねるが、優はさっさと草の中に入って行ってしまった。

「ちょっと!優!」

置いていかれないように急いで優の後を追いかけた。かき分けた草の先に優の後ろ姿が見えるが、すぐにその姿は消えてしまう。

「優!待てよ。どういう事なんだ??」

しかし、優の声は返ってこない。
やがて、健太郎は草から抜け出し、ようやく優に追い付いた。

「ついて来い」

優はそれだけ言うと、建物の方に向かって歩いて行く。健太郎はもう何も聞かずに黙って優の後に続いた。
< 77 / 113 >

この作品をシェア

pagetop