HEAD/phones~ヘッド・フォン~
中に入ると相変わらず冷えきっていて、息苦しい空気が充満している。嫌な感じだ、健太郎はそう思いながらも、何も言わず進む優と共に二階への階段を上がる。こんな所に一人取り残されるのだけは嫌だった。
二階は一階に比べると広く感じた。部屋数が少なく、一階にあったような白い壁もないからだろう。でもその闇の広さが不気味さを増しているようにも思えた。
優は懐中電灯で何やら壁を照らしている。
「ここに何かあるのか?」
健太郎の声にやはり優の反応はない。仕方なくその様子を黙って見ている事にした。
部屋の方を見やると、懐中電灯の伸びた明かりで中の様子がうっすらと浮かんでいる。床に書類のような紙が落ちているのがぼやけて見えた。
---そう言えば、下の階にも落ちてた…?
「優、あれって…」
健太郎がそう言いかけた時、優が声を発した。
「やっぱり」
「どうした?」
そう尋ねると、優は振り返り健太郎に何かを手渡した。
「これは…」
健太郎はそれを掴んだ。優が懐中電灯で照らすと、ヘッドフォンが現れた。
「これって陽ちゃんの?」
「違う」
優はキッパリと言う。
「違う?じゃあ…」
健太郎はこれが何を意味するのか考えようとした。