HEAD/phones~ヘッド・フォン~

「そいつをよく見てみろ」

優はそう言うが、別に変わった所はない。健太郎には普通のヘッドフォンにしか見えなかった。

「…どこが違うんだ?」

「左右に引っ張ってみろ」

健太郎は優の言葉通り左右に引っ張った。すると、ヘッドフォンは真ん中から二つに別れた。
それを見る優の目は、謎が解けたかのように輝いていた。

「壊れた、のか?」

「いや、そういう風に出来てるらしい」

「何の為に?」

優はその質問に答える代わりに話し出した。

「ここに来る前にヘッドフォンを拾ったって言っただろ?」

健太郎は黙って頷き、優の言葉から答えを探ろうとした。

「俺がそのヘッドフォンを耳にあてた時、その時もさっきみたいな人の声が聞こえてきた。というより、頭の中に直接響いてくるような感じだった」

健太郎は何の反応も示さず、ただじっと耳を傾けている。

「その時は男が女を罵っているような、そんな会話が聞こえてきたんだ」

「会話?」

健太郎は思わず聞き返した。

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