HEAD/phones~ヘッド・フォン~

「ああ、コードレスにしたっておかしいだろ?俺も幻聴かと思ってたんだが、お前らが林の中に入って行ったろ?俺は車に残ってその事を考えていたんだ。そしたら陽助が置いていったヘッドフォンからまた聞こえてきた。でも、今度はあの時聞いたような会話なんかじゃなく…それは、俺に語りかけてきたんだ」

「えっ?」

健太郎はまたもや声を上げた。

「語りかけてきた?これがか??」

手に持ったヘッドフォンが気味悪く思えてきた。

「俺も最初は自分の耳を疑ったよ。ヘッドフォンから、物から呼びかけられるなんて。けど、それは幻聴なんかじゃなかった。だから俺は呼びかけに応じ、ヘッドフォンを耳にあてたんだ」

とてもじゃないけど健太郎には信じられない話だった。
本の読み過ぎで、もしくはいきなりこんな状況になってしまって頭がおかしくなってしまったんじゃないかと思った。しかし、実際ヘッドフォンから声がしたのをこの耳で聞いている。まさか僕までおかしくなってるんじゃ…。

そんな思いを巡らせていると優が言った。

「そして、その声は言うんだ。『俺をあの女の所へ連れて行ってくれ』って」

その話に健太郎の混乱はますますひどくなった。

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