HEAD/phones~ヘッド・フォン~
目を開けたノブオの視界はぼやけていた。いつの間にかベッドの上に横になっている。
「夢だったのか…?」
そう思ってホッと溜め息をついた瞬間、視界に女の姿が現れた。それが誰なのかすぐには分からないでいると。
「気付いたわね」
その声を聞いてノブオは愕然とした。
「…夢じゃなかったか」
「どう?真実を知った感想は?」
ノブオは呆然と天井を見上げた。
「…まだ分からない」
「ゆっくりでいいのよ」
「でも」
ノブオの中をモヤモヤとしたものが埋め尽くしていく。
「でも、俺は一体…」
「そうね、そういう事になるわね」
女は隣に座ると、ノブオの胸に手をあてた。重さも体温も感じなかったが、心地良かった。ノブオの体温で溶けて消えてしまいそうなくらい白く細い手。
「あなたなら大丈夫」
女はそう言うと、立ち上がり横にある棚からもう一つのヘッドフォンを持ってきた。
「それはもういいよ」
ノブオはヘッドフォンを見て首を横に振る。
「あなたの答えはこの中にあるわ」
女はヘッドフォンを先程と同じように壁から出たコードに繋ぐと、それをノブオに手渡した。
「俺の答え…?」
「そう。あなたが存在している理由」
「…俺が、存在している、理由」
ノブオはそうつぶやき、ヘッドフォンを耳にはめると横になった。そして、心の中でもう一度繰り返した。
---オレガ、ソンザイシテイル、リユウ---