HEAD/phones~ヘッド・フォン~

 ノブオは再び宇宙の中にいた。やはり広大な宇宙の中では、自分の存在がちっぽけに思えてならない。
やがてノブオは導かれるように流されていく。自分の意思とは関係なく物凄いスピードで宇宙をさ迷うと、ある小さな星が見えてきた。灰色で表面がザラザラしている。初めて見る星だったが、どこか懐かしい感じがする。
次第に近くなる灰色の星は、ノブオ目掛けていきなり飛んできた。ノブオは避ける事が出来ず目を閉じた。しかし、何の衝撃もない。不思議に思いゆっくり目を開けると、ノブオの前に大きな穴が空いていた。その真っ黒の穴の周りは小さな石みたいなもので覆われていて、それがウジャウジャと動き回っている。

『これは、さっきの灰色の星?』

すると、いきなり大きな黒い穴が渦を巻き出した。ゴゴゴゴゴゴゴ……と低い音を立てたかと思ったら、ノブオはその穴に吸い込まれていた。渦に合わせてノブオの体はぐるぐると引きずり込まれていく。右に左にと穴は曲がっている。ノブオの方向感覚は完全に失われていた。どっちに進んでいるのか全く分からなかった。ただ、流れに身を任せるだけである。
しばらくそうしていると、突然視界が開けた。そして、ゆっくりと地上へ落ちていく。

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