HEAD/phones~ヘッド・フォン~
ガラス部分から中を覗くと、女性が一人裸で寝ている。白く透き通るような肌が眩しい。
『誰だ?』
ノブオは囁いたが、女はぴくりとも動かない。
『…死んでるのか?』
そう思った時、その棺桶のような物体から幾つも出ている管に気付いた。それを目で辿ると、そこには巨大な機械があった。
その機械の中には透明なガラス管が幾つも並んでおり、それぞれに気体が浮かんでいる。それが虹色に変化していた。ノブオが不思議そうに眺めていると、後ろの方でヴンッとい音が鳴った。振り返るとそこにひテレビのような画面があった。そして、その画面に何かが映し出されている。
『これは…』
画面の中には青い星が浮かんでいた。
『地球』
ノブオがその画面に見入っていると、映像が変わった。そこに映し出されたものは…。
『……俺…?』
そこにはノブオの姿が映し出されていた。それに、忘れていた親や友達の姿まである。画面の中のノブオは大学で友達と楽しそうに話をしている。
『俺が、映ってる…』
ノブオは画面に歩み寄ると、画面に手を伸ばして自分に触れた…と思った。しかし、ノブオの手は“ノブオ”の向こう側に突き抜けていた。手の甲にもう一人のノブオの顔が浮かんでいる。
『立体…映像…』
ノブオはもう一人の自分を凝視する。
俺はこんな顔をしていたんだ。こんな顔で笑ってたんだ……小さな世界だ。小さな存在だ。俺はこんな中で生きていたのか……。
突き出した手で画面の中の自分の顔を思い切り掴んだ。掌に爪が食い込んで痛みを感じたが、血は出なかった。
『これが…これが俺のすべてなのか…?』