HEAD/phones~ヘッド・フォン~
 健太郎と優は陽助を探して屋上へと来ていた。結局この建物の中に陽助はいなかった。

---どこに行ってしまったのだろう。

空を見上げると、なんとも言えない模様が描き出されていた。まるで世界が歪んでいるように見える。
健太郎はポケットから携帯電話を取り出して見た。画面は黒いまま変わらない。辺りは次第に暗くなってきている。しかし、太陽はない。明るさが消えていっているのではない。暗さが増してきているのだ。健太郎はそう思った。

「…ここは、どこなんだ?」

気味の悪い空を眺めていると、再びその疑問が湧いてきた。

「天国ではなさそうだな」

そう言って優は健太郎の肩をポンと叩いた。周りを取り囲む森はどこまでも延々と続いている。

「俺達、帰れんのかな…」

健太郎は不安になってきた。

「さあな」

優は冷たく言う。
健太郎は小さく溜め息をつき、もう一度空を見上げたその時。隣の建物の最上階の窓に人影が見えた。

「おいっ、優…あれ」

その人影を指差すと、健太郎から隠れるようにすぐに見えなくなってしまった。

「ノブオか…?」

「…それとも陽助か」

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