HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「ヘッドフォンは二つで一つ」
女はカーテンを閉めた窓を見つめたまま続けた。
「二つで、一つ?」
「一つはここにある」
「もう一つは?」
「あなたのお友達が持ってるわ」
「友達?」
女の言葉でノブオは三人の事を思い出した。
「そうだ!あいつらも…」
「ダメよ」
女はノブオの言葉を遮り、背中を向けた。
「どうして?」
「肉体を与えられるのは、それに耐えうる精神を持つ者だけ。誰でもというわけにはいかないの。それに」
女は言葉を切った。そして、ノブオの方を振り向いて、それから言った。
「残念だけど、あなた以外には消えてもらわなくちゃ」
その言葉にノブオは愕然とした。
「消えるって…どういう事だ??」
「そのままの意味よ。存在を消すの」
「それは…つまり…殺すって事か?」
「元々存在してないのよ。死ぬも生きるもないでしょ」
「でも」
「でも?」
「みんなは生きてるって思ってる」
「そうかしら?」
「どういう意味だ?」
「みんなどこかでは死にたがってるんじゃないの?」
「どうしてそう思う?」
「少なくとも、ここに来た人達はみんなそうだった」
「俺の他にも?」
「ええ、いたわ」
「みんな…死んだのか?」
「真実って、知らない方がいいのかもしれない。知れば苦しむだけ」
「…違う……俺は違う!俺は生きたい!たとえ世界が、真実がどうであろうと俺は生きたい!」