HEAD/phones~ヘッド・フォン~
「こいつ震えてるよ」
「ションベンちびんなよ」
「今度からオムツして来いや」
「可愛がってやるからよ」
そう言って一人が蹴りを入れようとした。
「待てよ。最初の一撃は、俺だろ?」
不良グループの後ろから現れたその顔を見て健太郎は顔面蒼白になった。
「これが開始の合図だ」
リーダーはそう言うと、健太郎の脇腹に回し蹴りをした。健太郎はもろにそれを食らい膝をついて倒れる。
「寝るのはまだ早いぞ、可愛い赤ちゃん」
「ほら、起きろよ!立て立て!」
腕を掴まれ引き上げられた健太郎の目には涙が溢れていた。骨が折れているのか、内臓が破裂しているのか、とにかくとても痛かった。涙が出る程痛かった。しかし、そのおかげで健太郎の中で何かが目覚めた。
「…違う」
健太郎は掴まれた腕を振り払う。
「なんだお前、しゃべれたのか?」
そう言って不良グループはバカ笑いしている。
「…お前達は、違う」
健太郎は拳を強く握りしめる。
「お前達は終わってるんだ」
次第に震えは消えていく。
「戦うのは…お前達じゃなかった」
「なに言ってんだ、こいつ」
「頭おかしくなったんじゃねぇの?」
そんな言葉を振り払うように健太郎は言う。
「戦うのはお前達じゃない!戦わなくちゃいけなかったのは……僕自身だったんだ」