HEAD/phones~ヘッド・フォン~

「……うそ」

それは中学に入って最初に出来た友達だった。

「でも、違ったみたいだな」

健太郎はその友達を見つめていた。こちらを覗く顔が泣きそうに見えた。

「どうする?」

「え?」

「お前が望むなら、殴ってやってもいいぜ」

「ううん、いい」

健太郎は首を横に振る。

「じゃあ、お前が殴るか?」

「それもいいや」

健太郎は続けて首を振った。

「どうして?お前つらい目にあってきたんだろ?全部あいつのせいなんだぞ」

「……そうかもしれない。でも、いいや」

「あいつを許すのか?」

「…分からない……ただ…僕を許すだけ」

「僕を許す?」

「そう…強くなりたいと思わなかった自分を許すだけ」

「…強くなったんだな」

その言葉に健太郎は顔を上げた。すると、目の前にいたリーダーはいつの間にか健太郎自身の姿に変わっていた。

「僕は…」

「今までごめんな」

弱かった自分はそう言うと、次第に透明になって消えてしまった。

「…きっと、あの痛みを覚えていたから…僕は強くなれたんだ…」

健太郎は消えていった自分にそうつぶやき、もう一度戸の方を見た。そこに友達の姿はなかった。


気がつくと健太郎は闇に囲まれていた。後ろを振り返っても誰の姿も見えない。もちろん不良グループの姿も。それに足の震えも止まっていた。

「僕は…一体…?」

ノブオが現れて、突然ナイフで襲いかかってきて、僕をかばって優は……。

「そうだ!優!」

健太郎は思い出した。

「ノブオの奴…でも、なんで?」

なんでノブオは急にあんな事を?ヘッドフォンを欲しがってたけど、何なんだ?あのヘッドフォンは何なんだ?

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