華麗なる人生に暗雲があったりなかったり
「俺が、うるさくしたことがあったかよ」
「わかってるくせに。小春ちゃんの言うことは何でも聞いちゃうんでしょ?」
嫌な笑みを浮かべる美玖に、侮蔑するように目を細めた。
「性格破綻者だな。下種な笑み浮かべやがって」
その言葉にさらに口元を吊り上げた。
「発言には注意したほうが良いよ。お兄ちゃんに言うこと聞かせるなんて、小春ちゃんに言えば簡単なんだから」
「それで、脅してるつもりか?」
水野は、美玖のこういう姿を知らないから庇う。
本当に騙されやすいやつだ。
こいつの本性見抜けよ。
「あらら。強気だね。良いよ。なら試してみようか?」
緩くウェーブがかかった長髪を、頭を振って払らいのける。
やっぱり、その顔には嫌な笑みが張り付いたままだった。
「お待たせ。できたよ」
水野が、ドアからひょっこり顔を出した。
途端に空気が和やかになる。
「私、おなか空いちゃったよ~!早く食べよ。運ぶの手伝う~」
猫かぶりを、早いところ追い出さないとマズい。
俺の頭には警鐘が鳴り響いていた。