華麗なる人生に暗雲があったりなかったり









「……お二人さん。私がいること忘れてません?」



 ああ。


 そういえば、水野の隣にお邪魔虫がいたな。


 水野は顔を、ばっと上げたかと思うと、俺の手を振り払って美玖に抱きついた。


 美玖は同じ体型の水野に抱きつかれ、一瞬よろめく。



「妹の前で、良く恥ずかしげもなく言えるよね。小春ちゃん、恥ずかしいのはお兄ちゃんだから気にすることないよ」



 美玖は水野の背中を撫でた。


 本当に、お邪魔虫であり疫病神。


 どうせなら俺に抱きついてくれれば良いのにと、情けない声を上げている水野のつむじを見下ろした。





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