華麗なる人生に暗雲があったりなかったり
第3章
悲しき平穏
水野に服装と髪型を褒められて以降、俺は気遣うようになった。
もともと、悪趣味な服を着る趣味はないからある程度気にはかけていたけが。
とにかく、姉貴の誘いに素直に付き合うようになった。
うまい飯は食べられるし、俺に合う服も買ってくれるのだ、付き合わない理由はない。
そして、髪も姉貴御用達の店で切るようにした。
全部姉貴が金を出してくれるから、何の問題もない。
しかし、水野の言葉にこうも影響されるなんて、俺の先行きが心配だ。
惚れたが負けで、少しでも良く見られたいと思ってしまうのだから仕方がない。
水野との関係は遊園地に行ってから、特に進展はない。
あんなに良い雰囲気だったのに、変化なし。
夢の国で頭が浮かれていたのだろうか?
好きだと言っても、振られ続ける。
「一体、何がダメなんだ?」
年を越しても変わらずで、堪らず聞いてしまった。
いつも、はっきりきっぱりの水野だが、色恋沙汰だと途端に言葉を濁す。
「ごめんなさい。榊田君がダメとかじゃなくて……えっと……」
別に困らせたいわけじゃない。
でも理由は知りたい。
でも何も言ってくれないのだ。
テストが終わり春休みに突入したが、相変わらずの俺たちの関係に、相変わらずの水野と仁の関係が続いていた。
何一つ変わっていない。
仁と二人きりで会うな、と再三に渡って言っているのに、水野は知らん顔。
会って欲しくないのは、仁のことを早く忘れて欲しいからだ。
水野だって早く忘れたいだろうに、仁とデート紛いのことを楽しんでいる。
もう、水野は仁を諦めている。
だから、二人でいてもどうにかなることはないから、その辺りは安心して邪魔をするまでのことはしていない。
一万歩譲れば、仁とは会っても構わない。
一万歩譲っても気に食わないのは、今まで水野の中で仁が占めていた位置を奪えずにいること。
もう、空席で一番近いところにいるはずなのは俺なのに、まだそこに座れていない。
水野の俺への態度は数ヶ月前とは違う。
頬を染めて、はにかんで笑ってくれるようになった。
仁のことを話していた時の表情と同じように。
でも、それから進展がまったく見られないから、ため息の数が増えるのだ。