華麗なる人生に暗雲があったりなかったり
そんなこんなの春休みに、佳苗と食事をする機会があった。
これも相変わらずで、俺たちは二ヶ月に一回は二人で飯を食う。
「良かったら、結婚式に来てくれない?」
そう言って、招待状が手渡された。
籍は入れているが挙式は三月だと聞いていた。
そういえば、もうすぐだな。
水野の失恋からもう一年か、あっという間に時だけは流れた。
二人の挙式は家族内だけで行い、仲間内でのお披露目会は別の日程にするらしい。
仁の両親は中学生の頃に事故で他界し、それ以降は、さらに水野家の一員になったと聞いている。
そんな水野家が仁の親族として参列するのは当然。
しかし、水野の家族と、佳苗の両親しか集まらない場に俺が招待されるのは明らかにおかしい。
「俊君にも来て欲しいの。良いでしょ?お願い」
佳苗とは仲が良いが、仲間内のお披露目会に出席する間柄ではない。
水野を通して知り合ったも同じだから、水野の家族と一緒に挙式に出ても問題ないか、そんな結論に至った。
水野はやはり挙式が近づいても平然としていた。
まぁ。
もう二人は籍を入れ、結婚祝いをした時も変わらずだったから、なんら不思議はない。
挙式でのドレスをどうしようかと、ひたすら雑誌やらネットを見ている。
ドレスが決まったら髪型はどうするやらアクセサリーは……
こういう機会がないと買ってもらえないからね、と言いながらアイテムを揃えるのに必死だ。
お前が主役じゃないのに意気込んでどうする、と俺が呆れて言うと、むっとしながら、
「可愛いくして出席したら、仁くんがきっと喜ぶわ。それに褒めて欲しいもの」
仁の場合、水野がめかしこもうが、何しようが可愛いと思っているのは間違いない。
そう思ったが、張り切っている水野をこれ以上邪魔すると、怒りの鉄拳と回転地獄蹴りが繰り出されるから何も言わなかった。
そして、挙式の二日前の金曜日。
いつも通り、道場の後、水野の家で夕飯を食べる。
「私も明日道場に行く。一緒に良い?」
珍しいことだ。
水野は週一回通うだけなのに。
明日は挙式の前日だから、一人で準備をするだろうと一緒に過ごすことを諦めていただけに願ったりだ。
やっぱり挙式には少し複雑な思いがあるのだろう。
なんせ、誓いのキスがあるしな。
やっぱりそんなの見たくないはずだ。