華麗なる人生に暗雲があったりなかったり





 バイト先のやつらで行われる飲み会が半年に一度ある。


 GW明けの五月中旬は、新しく入ってきたメンバーへの歓迎の意味で行われ、経費は塾で出してくれるということで参加率が高い。



「あんた、あれほっといて良いの?」



 隣の上原が俺を肘で突いた。


 あれというのは向かい斜めに座る、水野と橘だろう。


 水野はちびちび酒を飲み、橘は少しでも減れば注ぐ。


 水野のもう一方の隣に座る瀬戸では止めることができないようだ。


 ちびちびだから、大して飲んでない。


 というよりビールが苦手なのだろう。


 水野が制するのに、それに構わず橘は注ぐ。


 だが、本当に限界ならば、こいつははっきり断れるやつなのは俺も上原も知っている。


 上原が言いたいのは、橘が酒を注ぐたびにどんどん水野と距離を詰めて座っていること。


 仕方がないと、小さくため息を吐く。



「おい。橘。そいつに飲ませんな。顔見てわかんないのかよ?」



 ああ、うんざりする。


 何故、俺が水野のお目付け役をやらなければならないのか。



「相変わらず、水野ちゃんには過保護ですねぇ~俊君は!」



 酔っ払いが俺をからかい、ぎゃはは、とこれまた酔っ払いどもが便乗する。


 これだから嫌なんだ、酔っ払いは。


 それは無視して、俺は水野を睨みつけた。



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