華麗なる人生に暗雲があったりなかったり
どうも俺の周りの女は手に負えないのが多い。
水野を筆頭に、姉貴に美玖、上原に瀬戸。
あと、おばさんも食わせものだ。
どいつもこいつも水野をネタにする、性質の悪い連中。
「おい!俊。女の子を待たせるわけには行かないんだ。急げ」
安住に腕を引っ張られ、正門を出る。
そこで、ちんまりした物体がよろけながら駆け寄ってきた。
「俊君!」
佳苗だった。
昨日の水野と言い、今日の上原と瀬戸と言い、とんでもない女といた俺には女神に見えた。
それは一瞬だけだ、こいつは疫病神の嫁なんだ。
さらりと無視をして歩き出す。
「ど、どうして無視するの!?電話もメールも、ひどいよ!」
俺が徹底的に無視をするが、佳苗は小走りで俺の横にぴったり付き、話しかけてくる。
駅に着き、ホームまでついてくる。
挙句の果てに、同じ電車に乗り込んだ。
「ね!俊君!いい加減に、無視しないでよ!話聞いてよ!」
さっきから、この調子。
三人が居た堪れないように、俺を肘で突く。
こいつら絶対に勘違いしてる。
「おい。佳苗。お前、勘違いされてるぞ。人妻のくせに違う男に言い寄ってるってな」
佳苗の左手の薬指をちらりと見る。
俺の悪い噂まで立ちかねない。
「なら、俊君が無視しなければ良いだけでしょ?これ快速だね、どこか出掛けるの?私と話す時間作ってくれるならすぐに帰る。あ、あの。ごめんなさい。お邪魔して」
三人にぺこぺこ頭を下げるが、電車の揺れに、あわわ、とドアに激突する。