華麗なる人生に暗雲があったりなかったり
「今まで何でも思う通りになる人生だったんでしょ?でも、相手は仁よ?小春さんの中で仁のことは未練としてずっと残るし、仁が好きな気持ちは薄れないわ」
「自分の旦那を良くそこまで持ち上げられるな」
「客観的な評価のつもりよ。俊君は多くを望み過ぎ。仁が自分の立場を俊君に譲るわけないでしょ?小春さんの中の仁の存在を認めてあげない限り、ずっと振られ続けるわ。仁を排除しようとするからダメなのよ」
「あのな。俺はもう水野のことはどうでもいいんだ。前提が間違ってる」
佳苗は、俺と水野が付き合っていることになっていることを知らないんだな。
黒澤と安住の前で、良くもペラペラと。
「なら賭けようか?俊君は小春さんのこと諦めてない。今は拗ねてるだけで、いずれ性懲りもなく追いかけるわ。仁の全財産賭けても良い」
自分の財産じゃないところが、ずる賢い。
「勝手に賭けて良いのかよ?そんな賭けをしたら余計、俺はそうしないだろ」
こいつの発言に呆れるばかりだ。
「なら賭けよう。俊君は賭け金払うために借金しても絶対追いかけるわ」
それはただの馬鹿がすること。
俺は馬鹿じゃない。
「誰が賭けるか。負けるからじゃないぞ。疫病神の貯金なんてもらってみろ、不幸になること確実だ」
俺の発言におかしそうに笑った。
「そう、残念。あっ!すいません!お騒がせして。俊君が合コンで自棄起こしそうになったら止めてあげてくださいね?後で小春さんに嫌われて泣く姿を見るのは忍びないので」
停車駅のアナウンスが聞こえ、反対側のドアが開いた。
「連絡待ってるから。早く、機嫌直してね」
ぴょん、とホームに降りて、にこやかに手を振った。
ああ。
俺の周りには本当にロクな女がいない。
何だって、こんなに最悪な女ばっかりそろってんだ?
電車が走り出し、嫌味なほどにこやかな佳苗の顔が消える。