華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




「何?あんた聞いてないの?昨日から小春は風邪でダウン」



 彼氏のくせに、と言わんばかりの顔で上原は言った。


 今日は道場があるから、その時に誘おうかと思ったのに誤算だった。


 とりあえず、何かあったらメールしろ、とだけ送った。


 その日も、その次の日も返信はなかった。


 そしてとうとうクリスマスになった。


 水野が風邪を引いて、四日目だ。


 夕方になっても連絡なし。


 心配になり、上原に電話をかけた。


 上原たちは俺が見舞いに行っているものと思い込んでいたらしく。



「鬼!」



 と怒鳴られた。


 俺は俺で上原か瀬戸が見舞いに行っていると思っていた。


 偽彼氏に来られても迷惑だろうと思い、行かなかったのに。


 急いで、水野に電話をかけるが、電源は切られていた。


 四日前に上原にメールを送っただけで、他の友人にも連絡を入れていないようだ。


 インフルエンザにでもかかったのか。


 水野は基本、しっかり者で自分の面倒は自分で見られる。


 だが、人に頼ることを嫌う傾向にある。


 今回もそんなところだ。


 病人のくせして生意気なことを考えるな。


 そう思いながら、水野のアパートを訪ねた。


 応答なし。


 これは、緊急事態か。


 身体は丈夫だと豪語していた水野が四日寝込むのは、さすがにおかしい。




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