華麗なる人生に暗雲があったりなかったり





 マイナスイオンを大量に補給した俺は、言うまでもなく近年まれに見るほどのご機嫌だった。


 外見上変わりはないが、もう最高の気分。


 周囲のからかいや、意地悪発言も軽く受け流し、存分に水野を特別扱いしている。


 最近では、彼女を溺愛しているではなく、愛妻家と言われることが多くなった。


 もう付き合うのをすっ飛ばして、すぐにでも結婚したいぐらいだ。


 いずれ、愛妻家になる日が来ることを切実に願いながら、俺は聞き流す。


 好きと言われてから心にゆとりが持てた。


 他の男を寄せ付けないように目を光らせていたが、その心配ももうない。


 俺以外にはあんな無防備な態度を取らないわけだから、男と二人きりにさせても問題がない。


 橘を血祭りにあげる必要はなかったわけだ。


 いや、あれから携帯の請求をして来ないとこを見ると、別の意味で効果があったか。


 そして、本来の効果も今の俺の意志に反して、発揮された。


 橘との一件が広まり、水野と出掛けるのに俺のとこまで許可を取りに来る者が現れたのだ。





















「ゼミで春と組むことになったから仕方がないんだ!決して、やましい気持ちはない!信じてくれ!何なら榊田も一緒に」



「春?」



「い、い、いや。すまん。水野さん。いや、水野様だ」



 男の必死な表情を苦々しい気持ちで眺めながら、俺は坦々麺をすすった。



「……俺に許可取る必要ないだろ?勝手にすれば良い。呼び方もな」



 眉間に思わず力が入る。



「ほ、本当か?春……ごっほん……水野様と一緒に出掛けると、はん、半殺しになるとか聞いて」



「……くだらない噂を真に受けるな。誰と出掛けようが、あいつの自由だろ?他のやつらにも言っておけ。どんな理由であれ、俺は気にしないから勝手に誘え、ってな」





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