華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




 だから、



「そんなに崇拝してんな」



 忠告した。


 拠りどころである仁に裏切られたら、こいつは立っていられない。


 しかし、水野は裏切りなんてあり得ないと、笑った。


 何を根拠にそう言えるんだ?


 それが崇拝してるって言うんだ。



「憶が一、仁くんが私を裏切っていたとしても、私にとって彼が絶対だから。彼を信じるから、やっぱり裏切りは存在しないよ」



 馬鹿だと思っていたが、それ以上の馬鹿だった。


 何で、そこまで仁を崇拝する?


 こいつを見ているとイライラする。


 どこまでも仁のことしか見ていない、こいつが疎ましい。


 その感情を吐き出すような言葉が口をつく。



「はぁ?じゃ、何か?お前は仁が、地を天だって言ったらそれを信じるって言うのか?馬鹿馬鹿しい」



 自分でも驚いた。


 下種な物言いだ。


 口から吐き出した、言葉の汚さに気分が悪くなる。



「もちろん。信じるよ」



 水野はまっすぐ見据え、きっぱり言いきる。


 その瞳は揺らがない、強い意思を持っていた。


 反吐が出る。


 自分の物言いに。


 この馬鹿の迷いない言葉に。





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