華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




 何、馬鹿なことをこいつは言ってるんだ。


 穢れない、まっすぐさが美徳だとでも思っているのか?


 そうやって、仁だけを信じて、拠りどころにして、それを失ったらどうする?


 こいつの、まっすぐさが好きだ。


 まっすぐ仁だけを見つめ、そのためだけに生きる。


 こいつの潔さが好きだ。


 強いと思う。


 ただ一つのことしか望まず、そのために何もかも捧げることができるのだから。


 その生き方に、こいつは迷いない。


 いろんなものを、水野は知らないうちに犠牲にしてきただろう。


 でも、何を犠牲にしても。


 何に変えても。


 仁が欲しいのだ。


 仁を疑うことは、こいつの生き方を否定することなんだ。


 わかっていた。


 水野が仁のことをどれだけ愛しているのか。


 ただ、思い知らされる。


 わかっていたはずなのに、思い知らされる。


 俺が入り込む隙間なんて用意されていない。


 二人はいずれ手を取り合うことになる。


 今は拗れているだけで。




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