華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




 現実に引き戻されるのが嫌だから、水野は俺を避ける。


 目を逸らす。


 なら、やっぱりこれは俺の役目だ。


 話をしていくうちに、水野が苛立っていくのがわかった。


 瞳に怒りが見て取れた。


 上手くいくかと思ったら、水野はその怒りを押さえ込んだ。


 コートを震える手で握り締めながら。


 そこまでして、感情を抑えつけようとするのか。


 これは怒らせるのも至難の技だ。


 死人復活計画は失敗に終わった。


 その失敗の代償は。


「榊田君のこと買いかぶり過ぎてたみたい。榊田君。あなた、かなり身勝手よ?」



 という冷ややかな言葉と侮蔑の目を向けられたことだった。


 明日から口を聞いてもらえないと確信した。


 きっと、俺の言うことなんて聞きもしないと。


 水野が帰った後。


 頼んだステーキを食べた。


 噛み切れやしない。


 さすがは安い肉。


 あまりの、不味さに大きくため息を吐いた。


 これも仁の呪いか。


 お前は本当に疫病神だ。


 結局、ステーキは残した。











 案の定、水野は俺に顔を向けることさえしない。


 広也たちとは淡々と話すし、笑っていた。


 ここ最近の水野と変わりない。


 俺にしたって、こんな水野と一緒にいるのはごめんだ。


 スキーをとりあえず楽しむに限る。


 上原と行動を共にした。



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