華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




「こんばんは」



 ぺこぺこ頭を下げている仁の婚約者に目を向ける。


 顔もスタイルも水野の勝ち。


 どんくさそうだ。


 水野はどこか抜けているやつだが、この婚約者は全部抜けてる感じだ。



「どうも。榊田俊です。おばさん、夕飯の準備するんですよね?」



 さらっと自己紹介をし、おばさんに目を向けた。


 仁にも敵意はあるが、おばさんも許せない。


 あの青ざめ、恐怖に歪んだ顔を見た今、おばさんに好感も持つなんてできない。


 冷やかに言うと、おばさんは肩をすくめた。



「大丈夫。佳苗さんが手伝ってくださるから。俊君は寛いでて良いわよ」



 二人でごゆっくり、と微笑みを浮かべ、仁の婚約者と立ち去って行った。


 おばさんに考えていることが理解できない。



「おばさんに楯突いたって、お前みたいなのは軽くあしらわれるだけだ」



 元凶はこいつだ。


 淡く優しい笑みを浮かべた仁?


 水野の夢物語じゃないのか?



「水野はお前に会いたくないんだ。とっとと出て行け」



「何だ?小春のナイト気取りか?相手にされてないくせに」



 かなりの性悪だ。


 初対面でこの無礼な態度、夢物語決定だ。




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