華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




 おばさんだけが水野に憤慨しながら、食事をした。


 文句を言いつつ、おかずを口に運んでいる。


 鉄の心だ。


 きっと水野がただの友達だったなら、俺もいつものようにおかわりしていた。


 確実に。

 水野の仁への想いの深さに落胆した。


 仁が憎くて仕方がない。


 水野に見てもらえる仁が。


 だけど、仁は結婚をする。


 水野は付き合ってもらうほど安い女じゃない。


 凛としてる。


 まっすぐだ。


 さすがは俺が惚れた女だ。


 もう少し。


 いやかなり、融通が利いて欲しいが。


 好きなものを好きと言える。


 自分を偽らない。


 そんな水野だから傷つく。


 傷つくことがないように守ってやりたい。


 笑っていて欲しい、生き生きと目を輝かせて。


 そのためにも俺に惚れれば水野は笑っていられる。


 俺なら幸せにできる。


 そして、水野には俺だけを見つめていて欲しい。


 覚悟を決めるしかない。


 水野が壊せないなら、俺が壁を壊すしかない。


 腹を括るしかない。


 そのためにも腹ごしらえだ。


 感傷に浸っている暇はない。


 仁を一回睨みつけてから、俺も食べた。


 仁が水野にあげた焼き魚も食べた。



「俺のだ。返せ」



「水野にやったんだろ?水野は食わないらしいから俺が食べてやる」



「お前にやるものなんて何もない」



「ほれ、骨だけ返してやる。お前にはこれで十分だ。あと、おばさんおかわり」



 焼き魚を一気に食べて、仁に皿を差し出しつつ、おばさんにお椀を出す。



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