華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




「あらあら、二人は仲良しね。絵になるわ」



 また、おばさんがうっとりした。



「おばさん。気色悪いこと言わないでください」


 冗談でも仲良しなんて言われたくない。


 それは仁も同じようで、



「そうですよ。こんな仏頂面が絵になるはずないでしょう」



「ああそうだな。お前は胡散臭い笑顔貼り付けて絵画にでもなればどうだ?」



「ガキがいい気なるなよ」


 仁が睨みつける。

 
 すると。


 仁の婚約者が仁の頭を叩いた。



「榊田さんに八つ当たりしないの!」


 婚約者はできた人物だと感心する。


 
「おい。母さん。小春に何か持っていっても。何も食べてないじゃないか」



 おじさんがおばさんに伺いを立てた。


 持っていっても口をつけるはずがない。


 というより、ほっといて欲しいだろう。


 一人で泣いていたいだろう。



「食べなかったのは小春よ。あんな子に食べさせる物なんてないわ」


 おばさんは突っぱねた。


 おばさんの水野に対する態度はひどすぎる。


 水野の想いをずっと見てきたはずなのに。


「おばさん。悪いのは無神経なことを言ったこの男です。何で水野を追い詰めるようなことするんですか?」



 勿論、よそってもらったご飯を受け取ってから言った。


 取り上げられたら、困るから。



「それよ」



「それ?」


 それ、とは何だ?


 おばさんが忌々しげに眉を寄せた。



「ここの男どもは、みんなして小春、小春って騒ぎ出す。お父さん、仁君に加えて今回は俊君までよ!?」



 わかるようでわからない。



「もう少しわかりやすくお願いします」



「考えても見て?お父さんはともかく、仁君と俊君みたいな美男子がこぞって小春を庇うのよ?憎いに決まってるでしょ?」



 俺は思いっきり目を細め呆れ返り、おじさんは、何で私はともかくなんだ!と訴えた。



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