華麗なる人生に暗雲があったりなかったり




「まぁね。でも教えるつもりはないわ。あの二人だけの秘密なんだろうからね」



「俺の味方だって言っておきながら、それですか?」



 あからさまなため息を俺は吐いた。



「期待してなかったくせに」



「ええ。そうですね。チャンスが巡ってきただけで満足です」



 おばさんが口をぽかんと開けた。


 そして、次の瞬間嫌な笑みを浮かべた。



「あら?やけに素直な発言ね」



「俺はいつでも素直です」



「捻くれ者のような気がするけど。良いわ。それならアドバイスをあげる」



「期待してませんから」



 どうせ冗談で混ぜっ返すに決まっている。



「俊君は目の保養になるもの。小春と付き合ってくれたらこれほど良いことはないわ」



 おばさんが敵にまわることはないと確信する。


 仁だけでも厄介なのに、おばさんまで敵になったらどうにもならなかった。


 とにかく、この顔に感謝だな。



「なら伺います」



「小春は鈍感よ。俊君のまどろっこしいやり方じゃ、永遠に気づいてもらえないわ」



「あいつの馬鹿さ加減はこの一年を見ればわかります」



 だから、腹を括ったんだ。


 どんなに水野を気にかけても『優しい榊田君』としか見られない。


 なら、今の関係を壊し、意識してもらうことからはじめなければ。



「もう一つ。鈍感だから、少し強引なぐらいが丁度良いわ。あの子は好意持ってくれている人を邪険にはできないから」



「それは参考になりますね」



「鈍感なあの子を一瞬で意識させる方法は押し倒すことよ」



「……おばさん」



 やっぱり、最後はこういう人なんだ。


 普通、自分の娘を押し倒せなんてアドバイスするか?



「女馴れしてる俊君でもあの子は手こずるわよ。なんせ初恋のレベルが高いから。気長に、かつ強引にやるしかない、これだけは確実」



 茶化すようにウインクをして、おばさんは微笑んだ。


 気長にやるつもりはないが水野相手じゃ、それも仕方あるまい。


 あいつには本当に振り回されぱっなしだ。


 そして、これからもそうなるに決まっている。


 自室でのん気に寝てる水野を心底恨めしく思った。





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