華麗なる人生に暗雲があったりなかったり
人生初の告白はいかに
東京に戻ってきた途端、慌しくなった。
家を一週間以上空けていたとなると、そんなものだ。
広也にメールで水野の実家にしばらくいると伝えると、その後電話が鳴り響いていたが無視した。
それがいけなかったのか、姉貴に密告したらしい。
東京に戻ると同時に姉貴から連絡があり、会うことになった。
強制的に。
俺が、実家に連れ戻されるか残れるかは姉貴にかかっているから、立場が弱い俺は従うしかなかった。
「で、旅の成果はどうだったんだ?俊?」
仕事帰りの姉貴に合わせ、指定の店に行くとすでに姉貴はいた。
挨拶なしどころか、俺が席についてもいないのに、これだ。
椅子を引きながら、広也は地獄行きだなと心の中で呟く。
「別に」
「何だ?ダメだったか。お前は顔も頭も私に似て良い。それを最大限に生かせ」
「母親気取りか」
俺は姉貴の真意を掴もうと、気を引き締める。
「お前は私の可愛い弟だ。恋の悩みならいつでも相談にのるぞ。お前ときたら、近くにいても連絡さえ寄越しもしない。私は寂しいぞ。いつでも甘えて構わないんだからな」
また、始まった。
姉貴は一人で話を進める。
だから、俺は取り合わない。
いつもなら。
しかし、今回は広也の話をどこまで信じているのかが知りたい。
この間まで、広也の話を信じていなかったのに、今は違うようだ。
俺は眉をひそめた。
「広也の言うことを真に受けるなんて姉貴らしくもない」
「何だ?広也が嘘を吐いてるとでもお前は言うのか?」
姉貴はけろっ、とした顔で聞き返す。
「あいつは大げさなんだ。ついでに馬鹿だ」
あいつをただの馬鹿だと思っていて欲しい。
意外と鋭く、的を射たことを言うやつだとわかったら、大変な事態になる。
おしゃべりな広也だ。
この一年間を洗いざらい喋っているに違いない。
それが真実だと姉貴が知ったら。
あまりの恐ろしさに悪寒が背筋を駆け抜けた。