ピュア・ラブ
神社からアパートに着くまでの間で、私達の荷物は増えていた。
橘君は出店で買ったご飯。私は、コンビニに立ち寄って買ったお菓子とアイス。
会話は、「どれにする?」「何がいい?」それくらいで、あとはアパートに着くまで、さほど話はしなかった。だけど、不思議なことに窮屈でもなんでもなかった。
きっと橘君は、人にそうさせないオーラがある人なのだろう。
コートのポケットから家の鍵を出すと、
「使ってくれているんだね」
また、そう言った。
「うん、かわいいわ、ありがとう」
「どういたしまして」
鍵をさすと、中からはモモの鳴き声が聞こえた。
「あら、モモが鳴いているわ。珍しい」
玄関で私の帰りを出迎えるモモだが、鳴くことはなかった。急いで鍵を開けてドアを開けると、モモはいつもの場所で座っていた。
「モモ、どうしたの? ただいま」
コンビニの袋を置いて、靴を脱ぐと、すぐにモモを抱き上げた。喉をゴロゴロと鳴らしていつもとかわらない。
「何ともないわ」
「寂しかっただけさ」
「そう?」
私の後ろから玄関に入って来た橘君も、抱っこされているモモの頭を撫でた。
「どうぞ、中に入って」
「お邪魔します」
橘君には悪いけれど、先に手を洗い、モモのご飯を用意する。
そう言えば朝ご飯をいつもより食べていなかったきがする。お腹が空きすぎて鳴いていたのだろう。私の足回りに頭をこすりつけてご飯を催促している。心配することはなさそうだ。
「はい、モモ。お待たせしました」
いつもの食事場所にカラカラのフードと、缶詰を混ぜ合わせ、置いた。
モモは勢いよくがっつきあっという間に完食してしまった。
次は橘君だ。
温かかったお好み焼きや、焼きそばも、すっかり冷めてしまっている。
お皿に盛ってレンジで温める。
キッチンから橘君を見ると、こたつにも入らず正座をしていた。
いけない、食事よりも橘君だ。
「ごめんなさい、こたつに入って」
「ありがと」
スイッチを入れ、傍に脱ぎ捨ててあった橘君のダウンジャケットをハンガーにかける。
そのままテレビのスイッチを入れて、リモコンを橘君の傍におく。
「いま、支度するから、好きな番組をみていて」
「分かった」
いそいでエプロンを着けて、食事の支度をする。
何もかもペアでは用意していない食器。お茶を淹れるのにも湯呑みがない。仕方なく、マグカップを用意して、急須にお茶の葉を入れる。
レンジで次々とご飯を温めている間に、こたつの上にどんどん運ぶ。
「何か手伝う?」
「ううん、いいの、座っていて」
ぱたぱたと狭い部屋の中を世話しなく歩いている私にそう言ってくれた。
でも、温めるだけのご飯だ。何も難しいことはない。難しくしてしまっているのは自分だ。
「もてなし」という事をしたことがない。だから、手順が分からないだけだ。
橘君にそういう事を教えてもらって、ありがたく思う。
私が少しでもこうして心が開くことが出来るのは、橘君だからだ。皆が皆そうでないことは分かっているけれど、私のような臆病者は人付き合いにも限界がある。だから、これくらいでいいのだ。
「はい、お茶。ごめんね、こんなカップしかなくて」
「ペアであったらどうしようかと思った」
全て用意して、いつもの自分の定位置にすわり、買って来た屋台料理を食べる。
「いただきます」
「朝めし食ってないから腹減った」
「たくさん食べて」
小皿に取り分け、どんどんなくなる。そうとうお腹が空いていたらしい。
他人と食事をすることに少し緊張したが、大きな口を開けて平らげる橘君を見て、その緊張もほぐれる。
「黒川も食わないと、俺が食っちゃうぞ」
「いいのよ、どんどん食べて。私はお菓子があるから」
「虫歯になるぞ」
「そうね」
橘君は出店で買ったご飯。私は、コンビニに立ち寄って買ったお菓子とアイス。
会話は、「どれにする?」「何がいい?」それくらいで、あとはアパートに着くまで、さほど話はしなかった。だけど、不思議なことに窮屈でもなんでもなかった。
きっと橘君は、人にそうさせないオーラがある人なのだろう。
コートのポケットから家の鍵を出すと、
「使ってくれているんだね」
また、そう言った。
「うん、かわいいわ、ありがとう」
「どういたしまして」
鍵をさすと、中からはモモの鳴き声が聞こえた。
「あら、モモが鳴いているわ。珍しい」
玄関で私の帰りを出迎えるモモだが、鳴くことはなかった。急いで鍵を開けてドアを開けると、モモはいつもの場所で座っていた。
「モモ、どうしたの? ただいま」
コンビニの袋を置いて、靴を脱ぐと、すぐにモモを抱き上げた。喉をゴロゴロと鳴らしていつもとかわらない。
「何ともないわ」
「寂しかっただけさ」
「そう?」
私の後ろから玄関に入って来た橘君も、抱っこされているモモの頭を撫でた。
「どうぞ、中に入って」
「お邪魔します」
橘君には悪いけれど、先に手を洗い、モモのご飯を用意する。
そう言えば朝ご飯をいつもより食べていなかったきがする。お腹が空きすぎて鳴いていたのだろう。私の足回りに頭をこすりつけてご飯を催促している。心配することはなさそうだ。
「はい、モモ。お待たせしました」
いつもの食事場所にカラカラのフードと、缶詰を混ぜ合わせ、置いた。
モモは勢いよくがっつきあっという間に完食してしまった。
次は橘君だ。
温かかったお好み焼きや、焼きそばも、すっかり冷めてしまっている。
お皿に盛ってレンジで温める。
キッチンから橘君を見ると、こたつにも入らず正座をしていた。
いけない、食事よりも橘君だ。
「ごめんなさい、こたつに入って」
「ありがと」
スイッチを入れ、傍に脱ぎ捨ててあった橘君のダウンジャケットをハンガーにかける。
そのままテレビのスイッチを入れて、リモコンを橘君の傍におく。
「いま、支度するから、好きな番組をみていて」
「分かった」
いそいでエプロンを着けて、食事の支度をする。
何もかもペアでは用意していない食器。お茶を淹れるのにも湯呑みがない。仕方なく、マグカップを用意して、急須にお茶の葉を入れる。
レンジで次々とご飯を温めている間に、こたつの上にどんどん運ぶ。
「何か手伝う?」
「ううん、いいの、座っていて」
ぱたぱたと狭い部屋の中を世話しなく歩いている私にそう言ってくれた。
でも、温めるだけのご飯だ。何も難しいことはない。難しくしてしまっているのは自分だ。
「もてなし」という事をしたことがない。だから、手順が分からないだけだ。
橘君にそういう事を教えてもらって、ありがたく思う。
私が少しでもこうして心が開くことが出来るのは、橘君だからだ。皆が皆そうでないことは分かっているけれど、私のような臆病者は人付き合いにも限界がある。だから、これくらいでいいのだ。
「はい、お茶。ごめんね、こんなカップしかなくて」
「ペアであったらどうしようかと思った」
全て用意して、いつもの自分の定位置にすわり、買って来た屋台料理を食べる。
「いただきます」
「朝めし食ってないから腹減った」
「たくさん食べて」
小皿に取り分け、どんどんなくなる。そうとうお腹が空いていたらしい。
他人と食事をすることに少し緊張したが、大きな口を開けて平らげる橘君を見て、その緊張もほぐれる。
「黒川も食わないと、俺が食っちゃうぞ」
「いいのよ、どんどん食べて。私はお菓子があるから」
「虫歯になるぞ」
「そうね」