ピュア・ラブ
「光星はね、私よりいい獣医になるとおもうよ」
先生と言うよりも、お父さんとして私に話をしている。
「レオがね、死んだんだよ」
あの花の座布団の真ん中にふてぶてしく寝ていたおじいちゃん猫だ。橘君はとても大事にしていた。
私は、涙が溢れ、どうしようもなかった。拭う事も忘れ、先生を見つめた。
「レオの為に泣いてくれるのかな? 君の涙はとても綺麗だ。君の心には嘘がないね」
レオが死んだことは知っているだろうけれど、最後に会いに帰ってこられたのだろうか。落ち込んでいないだろうか。それが心配だ。
「もう年だったからね。大往生だよ。特に苦しむことなく、静かに息を引き取ったんだ。光星も慌てて帰って来てね。あいつ、声を出して泣くんだ。子供の頃から感受性が豊かで、すぐに相手の感情を持ってきちゃうところがあったから、命を扱う獣医には向かないと思っていたんだが、でも、やっぱりそうした優しい所があった方が、動物の医者にはひつようなのかもしれないと、私は思うようになった」
先生は、泣き止まない私にティッシュの箱を前に置いてくれた。
モモは傍で私が泣いているのをじっと見ている。
「何かあったと思う。急に北海道にいる先輩の所に修行だと言って出て行った。獣医の勉強をしたいと聞いてはいたが、はっきりと決まっていない内にそうしたんだ。初めは清掃係りだったそうだ。今でも、清掃係りの仕事をしながら、動物を診察させて貰っているそうだよ」
「頑張っていますね」
「これをね、見せようかどうしようか迷ったんだが、やっぱりみてもらうことにするよ」
そう言うと、先生は、モモのカルテの一番後ろを広げて、私に見せた。そこには、はがきに書いてくる字と同じ字体の文字が並んでいた。橘君だった。
”彼女は自分からしゃべったりしないし、答えもないかもしれない。でも、とても頭のいい人だから、何度も言ったり、返事を聞かなくたりしなくてもちゃんと理解している。俺の大切な人だから”
そう結んであった。
「親ばかだね、私も。北海道に発つまで、まるで元気がなくてね。いい大人の男だ、私が聞く事ではない。だが、知ってしまってね」
きっとそれは、賭けの話しだろう。
どういう付き合いをしていたなど知らないだろうけど、親なのだ、子供をよく見ていて当然だ。また、私は、羨ましい気持ちが出てきた。
「帰って来た時には、光星に許しを請う機会を与えて欲しい。悪いね、甘い父親で」
「いいえ」
「女性を泣かせてしまって光星に起こられてしまうな。あ、光星だけじゃなく母さんにも。ははは」
「すみません、長居をしてしまって」
「いや、いいんだよ。光星の代わりの研修医を入れているから、ゆっくりしていきなさい」
先生と言うよりも、お父さんとして私に話をしている。
「レオがね、死んだんだよ」
あの花の座布団の真ん中にふてぶてしく寝ていたおじいちゃん猫だ。橘君はとても大事にしていた。
私は、涙が溢れ、どうしようもなかった。拭う事も忘れ、先生を見つめた。
「レオの為に泣いてくれるのかな? 君の涙はとても綺麗だ。君の心には嘘がないね」
レオが死んだことは知っているだろうけれど、最後に会いに帰ってこられたのだろうか。落ち込んでいないだろうか。それが心配だ。
「もう年だったからね。大往生だよ。特に苦しむことなく、静かに息を引き取ったんだ。光星も慌てて帰って来てね。あいつ、声を出して泣くんだ。子供の頃から感受性が豊かで、すぐに相手の感情を持ってきちゃうところがあったから、命を扱う獣医には向かないと思っていたんだが、でも、やっぱりそうした優しい所があった方が、動物の医者にはひつようなのかもしれないと、私は思うようになった」
先生は、泣き止まない私にティッシュの箱を前に置いてくれた。
モモは傍で私が泣いているのをじっと見ている。
「何かあったと思う。急に北海道にいる先輩の所に修行だと言って出て行った。獣医の勉強をしたいと聞いてはいたが、はっきりと決まっていない内にそうしたんだ。初めは清掃係りだったそうだ。今でも、清掃係りの仕事をしながら、動物を診察させて貰っているそうだよ」
「頑張っていますね」
「これをね、見せようかどうしようか迷ったんだが、やっぱりみてもらうことにするよ」
そう言うと、先生は、モモのカルテの一番後ろを広げて、私に見せた。そこには、はがきに書いてくる字と同じ字体の文字が並んでいた。橘君だった。
”彼女は自分からしゃべったりしないし、答えもないかもしれない。でも、とても頭のいい人だから、何度も言ったり、返事を聞かなくたりしなくてもちゃんと理解している。俺の大切な人だから”
そう結んであった。
「親ばかだね、私も。北海道に発つまで、まるで元気がなくてね。いい大人の男だ、私が聞く事ではない。だが、知ってしまってね」
きっとそれは、賭けの話しだろう。
どういう付き合いをしていたなど知らないだろうけど、親なのだ、子供をよく見ていて当然だ。また、私は、羨ましい気持ちが出てきた。
「帰って来た時には、光星に許しを請う機会を与えて欲しい。悪いね、甘い父親で」
「いいえ」
「女性を泣かせてしまって光星に起こられてしまうな。あ、光星だけじゃなく母さんにも。ははは」
「すみません、長居をしてしまって」
「いや、いいんだよ。光星の代わりの研修医を入れているから、ゆっくりしていきなさい」