ピュア・ラブ
「黒川 茜様でございますね」
「はい」
パソコン画面で何か確認すると、宿泊表の記載を提示される。
備え付けのボールペンで必要事項を書くと、フロントマンは施設の説明をしてくれた。
「それと、お部屋でございますが、いつもこちらの旅行会社さんにはお世話になっておりますので、もう一つ別のお部屋をご用意させていただきました」
「え?」
「海の見えるお部屋のご予約ですが、その部屋の上階です。海の眺めも格別に違いますので、ゆっくりとご寛ぎ下さいませ」
「それは、ありがとうございます」
優しさのかけらもないようなことをしたあとで、いいことなど起こるはずがないと思っていたが、違ったようだ。
案内された部屋に入ると、目の前に海が広がっていた。
「わあ」
と思わず声を出すと、私のトランクを持って案内してくれたベルボーイが話し掛けた。
「この時期は海には入れませんが、波打ち際を歩かれたらどうでしょうか。砂がサラサラで風も気持ちがよろしいと思います」
「ええ、そのようですね」
「つかの間の休息をどうぞ」
「ありがとうございます」
そう言って、ベルボーイは部屋を出て行った。
シングルの部屋だったが、ダブルに代わっており、部屋も広かった。
籐家具のソファと、天版がガラスのテーブル。ベッドは大きなヤシの木の柄のカバーが掛けてあった。まさに南国といった感じでいい。
繁忙期の前で予約も少なかったのだろうが、私は、好意と素直に受け止めた。
着いてすぐに出かけるつもりだったが、海を見ながら少し休憩をすることにした。
短い期間の旅行の為、細かく予定を立てていたが、やめた。沖縄にはそういったいそいそとする時間は似合わない。
ルームサービスで、コーヒーと軽食を頼み、トランクから本を取り出す。
窓を開けて波の音を聞きながらの読書は、格別だ。
沖縄は時が止まったようだった。何度もみる時計は時間が進んでいない。
橘君は私に見せたい場所が沢山あったと言った。
旅行のしおりなど当然残していないけれど、ガイドブックに載っているようなところは回っただろう。
短い期間の旅行だ。主だった所だけを回ることに決めていた。
小腹も満たすと、なんだか本を読む時間が勿体ない気がして、ガイドブックとショルダーバッグを持って海にでることにする。
モモを写す為にと買ったデジカメでホテルからの景色を撮る。
ロビーから外に出るドアがあり、そこから外に出ると、屋外プールがあった。直線ではなく、くねくねと曲がりくねった形をしていた。泳ぐ目的ではないようだ。
階段を下ってプールの真ん中を突っ切ると、海に出た。
看板は、「遊泳禁止」と立てかけてあった。
だけど、ビーチパラソルとボンボンベッドが置いてあって、ホテルの宿泊客が何名か寝そべっていた。
首都圏からくると、強張っていた体が、沖縄の温かさに緩み喜んでいるようだ。
私も開いているベッドに座って、海を眺めた。
橘君が私に見せたかったと言った景色は、今、私が見ているのと同じだろうか。
北海道にいる橘君と私は今、日本の端と端にいる。
朝早い便で沖縄に付き、遅い便で東京に戻る。少々高い旅行代金となってしまったが、短い旅行期間を満喫するにはそれしかない。
ガイドブックをペラペラと捲って、おススメのレストランを探す。
沖縄に旅行に行くと決めてからは、毎日このガイドブックを見て目ぼしい所に付箋をつけた。
でも、実際来てみると、せわしなく観光をするのが嫌になってしまった。
どうしても見たかった首里城と水族館を廻り、あとはホテルでのんびりチェックアウトまで過ごそうと決めた。
「はい」
パソコン画面で何か確認すると、宿泊表の記載を提示される。
備え付けのボールペンで必要事項を書くと、フロントマンは施設の説明をしてくれた。
「それと、お部屋でございますが、いつもこちらの旅行会社さんにはお世話になっておりますので、もう一つ別のお部屋をご用意させていただきました」
「え?」
「海の見えるお部屋のご予約ですが、その部屋の上階です。海の眺めも格別に違いますので、ゆっくりとご寛ぎ下さいませ」
「それは、ありがとうございます」
優しさのかけらもないようなことをしたあとで、いいことなど起こるはずがないと思っていたが、違ったようだ。
案内された部屋に入ると、目の前に海が広がっていた。
「わあ」
と思わず声を出すと、私のトランクを持って案内してくれたベルボーイが話し掛けた。
「この時期は海には入れませんが、波打ち際を歩かれたらどうでしょうか。砂がサラサラで風も気持ちがよろしいと思います」
「ええ、そのようですね」
「つかの間の休息をどうぞ」
「ありがとうございます」
そう言って、ベルボーイは部屋を出て行った。
シングルの部屋だったが、ダブルに代わっており、部屋も広かった。
籐家具のソファと、天版がガラスのテーブル。ベッドは大きなヤシの木の柄のカバーが掛けてあった。まさに南国といった感じでいい。
繁忙期の前で予約も少なかったのだろうが、私は、好意と素直に受け止めた。
着いてすぐに出かけるつもりだったが、海を見ながら少し休憩をすることにした。
短い期間の旅行の為、細かく予定を立てていたが、やめた。沖縄にはそういったいそいそとする時間は似合わない。
ルームサービスで、コーヒーと軽食を頼み、トランクから本を取り出す。
窓を開けて波の音を聞きながらの読書は、格別だ。
沖縄は時が止まったようだった。何度もみる時計は時間が進んでいない。
橘君は私に見せたい場所が沢山あったと言った。
旅行のしおりなど当然残していないけれど、ガイドブックに載っているようなところは回っただろう。
短い期間の旅行だ。主だった所だけを回ることに決めていた。
小腹も満たすと、なんだか本を読む時間が勿体ない気がして、ガイドブックとショルダーバッグを持って海にでることにする。
モモを写す為にと買ったデジカメでホテルからの景色を撮る。
ロビーから外に出るドアがあり、そこから外に出ると、屋外プールがあった。直線ではなく、くねくねと曲がりくねった形をしていた。泳ぐ目的ではないようだ。
階段を下ってプールの真ん中を突っ切ると、海に出た。
看板は、「遊泳禁止」と立てかけてあった。
だけど、ビーチパラソルとボンボンベッドが置いてあって、ホテルの宿泊客が何名か寝そべっていた。
首都圏からくると、強張っていた体が、沖縄の温かさに緩み喜んでいるようだ。
私も開いているベッドに座って、海を眺めた。
橘君が私に見せたかったと言った景色は、今、私が見ているのと同じだろうか。
北海道にいる橘君と私は今、日本の端と端にいる。
朝早い便で沖縄に付き、遅い便で東京に戻る。少々高い旅行代金となってしまったが、短い旅行期間を満喫するにはそれしかない。
ガイドブックをペラペラと捲って、おススメのレストランを探す。
沖縄に旅行に行くと決めてからは、毎日このガイドブックを見て目ぼしい所に付箋をつけた。
でも、実際来てみると、せわしなく観光をするのが嫌になってしまった。
どうしても見たかった首里城と水族館を廻り、あとはホテルでのんびりチェックアウトまで過ごそうと決めた。