ピュア・ラブ
「黒川、少し休んでいけ。ごめん、暑かったよな、涼しい所に行こう」
「だ、大丈夫」

こういう状況だ、しゃべるしかない。

「ダメだよ、来て」

自転車のスタンドを立てかけられ、腕を掴まれた。
前に入った裏口方面に行くと、その横にももう一つあるドアを開けられた。
ドアを開けると、玄関があり、家に入る所だと分かった。
入るわけにはいかない。
私は、掴まれた腕をぐいっと自分の方に引っ張り拒絶を示す。

「いいから」

子供同士とは違い、明らかに力の差がある。
私の力では到底それ以上の拒否が出来ず、玄関に引きずりこまれる。
乱暴に靴を脱ぐと、正面にある階段を通り過ぎ、奥にある台所に連れて行かれた。
ダイニングテーブルがあり、椅子を引き、座らされる。
橘君は冷蔵庫からペットボトルを取出し、コップにそれを入れた。

「はい、これ飲んで」

コップを見ると、白く濁った飲料が入っていた。きっとポカリスエットのような物だろう。
私は、既に遠慮をするようなことも出来ないくらい喉が渇いていた。
コップに手を伸ばすと、一気にそれをのみ干した。
もう少し飲みたい。まだ、喉が潤わない。

「はい」

橘君はまた分かったかのように、コップに同じ飲料を注いだ。
私は、またそれをのみ干すと、やっと落ち着くことが出来た。

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