ピュア・ラブ
「母さんは出かけてるし、弟がいるんだけど、大学生でサークルかバイトに行っていると思う。弟も獣医をめざしているんだけど、一年留年してるんだよね。遊び過ぎだって怒られて、留年した分の学費は自分で払えって親父に怒られてた」

そうなのか、家族で獣医。それはいい。家族で助け合って病気の子たちを治すことが出来る。
私は、もうすでに「格差社会、格差家族」を目の当たりにしてしまった。
子供は親を選べない。だけど、全ての子供が平等であるべきだ。私は、もう出発の時点で底辺を這いつくばった人生を与えられたのだ。

「黒川って、今なんの仕事をしているの? たしか、経済学部に進んだよね。大学でも成績が良かったんじゃないの? いい仕事しているんだろうなあ」

私は、工場勤務なのよ。
流れ作業で、一列に並んだパートの中にまぎれ、仕事をしている。
音のうるさい工場で耳栓をして、衛生防護服を着て、マスク。この上ない、いい環境で仕事をしている。
派手な顔立ちでいつも見られてしまう。
顔を隠せ、話しをしなくてもいいのはストレスがない。
給料は他の大卒にしては安いが、残業もない。年末年始と夏休みは交代でとらなくても会社のカレンダーで指定してある所で夏休みがある。いちいち人と都合を合せなくてもいいのだ。

「でも、爪も短いし、ネイルもしてない、う~ん、きっと衛生関係の仕事なのかもね」
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