ピュア・ラブ
「あの、ちょっと待ってもらえますか?」
「あ、どうした? 何か他にもある?」
「ええ、ちょっと」

さすがに手ぶらではお邪魔できない。
家電量販店からエスカレーターで降りると、名店街があった。
好みもあるだろうが、外の暑さでも大丈夫だろう、フルーツを買うことにした。
このフルーツパーラーは、ボーナスが出た時に、ご褒美だと大好きな、イチゴと桃を買ったことがあった。
自宅用なのにわざわざ贈答品として包装してもらった。
あまりの美味しさにびっくりしたことがある。
季節柄、スイカが美味しそうだった。だが、これを持っては歩けない。隣にあった同じく丸い、メロンにした。
店員に贈答でと頼むと、箱に入れてくれた。

「いいのに、気を遣わなくて」
「いえ」

橘君もそれをみて分かったのだろう。気遣ってそう言ってくれた。
自転車だった私と、歩きで来ていた橘君は、歩いて家に向かっている。
じりじりと日差しが肌に突き刺す。帽子を被ってくれば良かったか。私は、いつも一つ忘れる。

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