ピュア・ラブ
私は、人との交わりを避けていたため、自分のペースを乱されるとどうしていいか分からなくなる。
一日をどう使うか決めて行動してきた。そこに違う事柄が入ってくると、どう組み立て直したらいいのか分からなくなってしまう。

「えっと……そうだ、モモのご飯」

台所に立っている私の足回りをニャーニャー言いながら顔をこすりつけている。お腹が空いているのは明らかだ。
家の玄関には、コロコロローラーがぶら下がっている。出勤時や出かける時に毛を取らないと、モモの白い毛が目立って仕方がない。ひと手間増えた。
買って来た刺身を細かく包丁で叩いて、器に入れる。モモは、私が包丁でみじん切りする音を立てると、刺身を切ってくれているんだと思って、大騒ぎする。賢いモモなのだ。

「ごめん、ごめん、はい、モモ、どうぞ。メリークリスマス」

食事場に器を置いて、頭を撫でる。モモは、それはがっついて、あっという間に食べきってしまった。

「ゆっくり食べなさいってば」

モモは、そんな言葉も聞かず、食べ終えると満足して、すり寄っても来ず、炬燵に移って毛づくろいを始めた。

「ゲンキンね」

そんなモモの様子を見ながら、私もテレビのクリスマス特番を見て、食事をした。
いつもなら、食事の後にのんびりとコーヒーを飲んで、後片付けをするのだが、今日はそうはいかない。
急いで、食事の後を片付け、食器意を洗う。
ふと、時計を見ると、既に8時になってしまっていた。

「あ~疲れちゃった」

人の予定に合わせたことなどない私は、時間ばかりを気にしてしまい、それだけでどっと疲れてしまった。
橘君が悪いわけでもなく、そういうことに慣れていないだけだ。
部屋着に着替える訳にも行かず、出掛けたままの洋服で、モモと遊ぶ。
テレビでは、歌番組の特番を放送していて、遊びに飽きてしまったモモと離れ、聞き入った。
すると家のベルが鳴った。すぐにインターフォンを取ると、「俺」と応答があった。
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