ピュア・ラブ
「橘君、ごめんなさい」
「え? ああ、これ? 気にしないでよ。ちょっとヒーロー気分」
私に気にならない様に気遣ってくれている。でも、笑ったり、食事をしたりするときでも絶対に痛いはずだ。ご両親にも申し訳ない。
橘君と私はあまりにも違い過ぎる。橘君は人を思いやり、気遣う事ができる素晴らしい人だ。三年間同級生だったらしいが、私は覚えていない。
それなのに、こうして親切にしてくれる。いいご家庭で大切に育てられたに違いない。
コーヒーのカップを持つ手をみると、傷は、かさぶたになっていたようだった。だけど、それも痛そうだった。手は常に使う所で、洗う。さぞかし痛かっただろう。
私は、買って来ていた手袋を渡すことにした。
「あの、橘君、これ、あの、ラッピングはクリスマスになっているけど、この間のお礼です。怪我させてしまって、ごめんなさい」
「俺に?」
テーブルの上に紙袋を置いて、橘君に渡した。
喜んでくれるだろうか、不安だ。
橘君は直ぐにラッピングを開けると、喜んだ顔を見せてくれた。いつも笑顔の橘君だが、その笑顔と体にリズムをつけて弾んでいた。
「手を怪我しちゃったから、手袋をしてなかったのかなと思って」
「そう、いつもポケットに手を突っ込んでたんだよ。ありがとう、嬉しい」
「いいえ、こちらこそ」
「どう?」
そう言って、手袋をはめた手を見せてくれた。紺とベージュで迷ったが、紺にして正解だ。とても良く似合っている。
「おーあったかい」
たかが手袋で、ここまで喜んでくれている。形に残る物を贈ってしまうのはどうだろうかと思っていたが、喜ぶ姿を見て安心した。
でも、橘君の用はなんなのだろう。私の用事は済み、怪我の様子も確認できた。だけど、最初に約束をしてきたのは橘君だ。
手袋をずっとはめたまま、モモと遊んだりして、時間は過ぎた。世間よりも早い正月休みに入る私は、明日から休みなので、何の問題もないが、橘君の仕事はいいのだろうか。
「コーヒー……飲む?」
「あ、うん」
とっくに飲み干してしまったコーヒーカップを持って台所に行く。さっきと同じように豆を入れて、二杯分のコーヒーを落とす。
香りと、コーヒーが落ちる音だけが家の中に響いた。
二杯目のコーヒーを淹れて、橘君の前に置く。
「ありがとう」
二人で、コーヒーのカップに口をつけた。
「え? ああ、これ? 気にしないでよ。ちょっとヒーロー気分」
私に気にならない様に気遣ってくれている。でも、笑ったり、食事をしたりするときでも絶対に痛いはずだ。ご両親にも申し訳ない。
橘君と私はあまりにも違い過ぎる。橘君は人を思いやり、気遣う事ができる素晴らしい人だ。三年間同級生だったらしいが、私は覚えていない。
それなのに、こうして親切にしてくれる。いいご家庭で大切に育てられたに違いない。
コーヒーのカップを持つ手をみると、傷は、かさぶたになっていたようだった。だけど、それも痛そうだった。手は常に使う所で、洗う。さぞかし痛かっただろう。
私は、買って来ていた手袋を渡すことにした。
「あの、橘君、これ、あの、ラッピングはクリスマスになっているけど、この間のお礼です。怪我させてしまって、ごめんなさい」
「俺に?」
テーブルの上に紙袋を置いて、橘君に渡した。
喜んでくれるだろうか、不安だ。
橘君は直ぐにラッピングを開けると、喜んだ顔を見せてくれた。いつも笑顔の橘君だが、その笑顔と体にリズムをつけて弾んでいた。
「手を怪我しちゃったから、手袋をしてなかったのかなと思って」
「そう、いつもポケットに手を突っ込んでたんだよ。ありがとう、嬉しい」
「いいえ、こちらこそ」
「どう?」
そう言って、手袋をはめた手を見せてくれた。紺とベージュで迷ったが、紺にして正解だ。とても良く似合っている。
「おーあったかい」
たかが手袋で、ここまで喜んでくれている。形に残る物を贈ってしまうのはどうだろうかと思っていたが、喜ぶ姿を見て安心した。
でも、橘君の用はなんなのだろう。私の用事は済み、怪我の様子も確認できた。だけど、最初に約束をしてきたのは橘君だ。
手袋をずっとはめたまま、モモと遊んだりして、時間は過ぎた。世間よりも早い正月休みに入る私は、明日から休みなので、何の問題もないが、橘君の仕事はいいのだろうか。
「コーヒー……飲む?」
「あ、うん」
とっくに飲み干してしまったコーヒーカップを持って台所に行く。さっきと同じように豆を入れて、二杯分のコーヒーを落とす。
香りと、コーヒーが落ちる音だけが家の中に響いた。
二杯目のコーヒーを淹れて、橘君の前に置く。
「ありがとう」
二人で、コーヒーのカップに口をつけた。