ピュア・ラブ
普段、全く人としゃべらない私が、これほどの大きな声が出るのかと自分でも驚く。
私は子供のころから人と会話をしない。
母親からは、失語症なのではないかと言われたが、そうじゃない。
無駄に喋りたくないだけだ。
私がこうなったのも全て、悪魔のような両親のせいだ。そのお陰で、私は、自分の存在を消し、余計な事を考えず、自分のことだけを考えればいいという、合理的な人生を選択した。
困ることなど何もなかった。
世の中にはいじめにあったり、仲の良かった友達に裏切られり、親友に男を取られただのと人間同士が関わる面倒なことに溢れている。私はそれらのことから関わらないで生きてこられているのだ、なんと幸せなことだろう。
好きな時にご飯を食べ、出掛けたくなったら外にでる。観たい映画を譲り合わずにもすむ。こんなに心地の良いことはない。
中学時代はなんと呼ばれていたか忘れたが、高校生になると、名前の「黒川」からとり、「黒子」と陰で呼ばれていた。
まさにその通りで、私は、そうあだ名がつけられた時に、「うまいことをいう」と心で笑った物だ。
影の存在。だから「黒子」。でも、私は、それにも不満だった。願いは、「存在自体を忘れて欲しい」という事だからだ。人として気にしているからあだ名がつく。私もまだまだだなと思った。

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