香りから始まる恋はいかがですか?

『目的地に到着しました』

という無情なナビの音声と
ともに俺の緊張はピークに。

すると彼女は、
俺の顔を覗き込み
不意に軽くキスをした。

俺は驚いて、
目を閉じる間もなく
彼女を見つめていると

「ほら、これで緊張、
少しは溶けたましたか?」って。

おいおい!

その緊張のほぐし方
間違ってるから!!!

夏には違う意味で
ドキドキさせられ

俺の顔は
強張っているであろう表情のまま
車を降り、彼女の後についていく。

俺たちは
庭にきれいな植物が植えられ
キレイに手入れされている
一軒家の前に立ち、
インターフォンを鳴らす。

すると中から
「わんわん!!わんわん」
と鳴き声が聞こえ、

玄関のドアが開けられると、
勢いよく豆柴らしき犬が
飛び出してきて
おもいっきりしっぽを振り、
夏に飛びついてきた。

彼女は、
それが当たり前のように
柴犬を抱きかかえ

「まめ!!元気だった?」
といい撫で回している。

「まめ」
と呼ばれたその犬の後ろから、
俺より少し背の低い男性が顔を出し

「いらっしゃい」と笑顔で
俺たちを迎えてくれて
この時点で、少し救われた気分だ。
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