香りから始まる恋はいかがですか?

さすがに驚き音楽を消し、

「おいっ」と声をかけたが

女は、
若干ニコニコしながら、
小さなガッツポーズまで
決めていた。

その意味不明な行動に
俺は、何度か声をかけたが、

こちらに目を向けることなく
女は、
自分の世界に入り込んでいた。

ここまで完全に俺の存在を
無視されたことはなく、

半ば悔しさから、
俺の最寄り駅で
女の腕を引っ張り、

引きずりおろした。

女は、さすがに目を丸くし、
自分の匂いを気にし、

俺の香水と喫煙を言い当て、
俺を笑わせ、

ひたすら謝り倒し、
再び電車に
乗っていってしまった。

取り残された俺は
ただ電車を見送り、

朝からのあの女の言動を
思い返していた。


なぜだ?

俺はあの女が気になり
また明日、同じ時間の電車に
乗ってみようと決め込んでいた。

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