香りから始まる恋はいかがですか?

なっちゃんだった。

彼女は俺と
視線を合わせようとせず
俺が「なっちゃん?」と
声をかけると

彼女は、少し驚いていたが、
瞳はゆらゆらとしていて、
視界が、どうやら
定まっていないようだった。

「あっ・・えっと・・
安藤・・さん。こんばんは」

と、
無表情のまま挨拶をしてきた。

その表情は、まるで感情を
どこかに置いてきて
しまったようにみえたので、

俺は、焦りを感じ
「なっちゃん?どうしたの?」
ときくと

「えっ?いや、なんでも・・
ありませんよ?」

と彼女は、
返事をしてくれたが
やっぱり目が合わない。

なんでもないようには
絶対見えない。

俺は
なっちゃんの肩に両手を置き
彼女の視界に入るようにすると

今度は
「あっ・・の・・わたし・・
おうちに帰れない・・んです・・」

と伝えてきた。

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