香りから始まる恋はいかがですか?

夏が俺以外の誰かと
幸せになるなんて・・

想像すると

胸がぎゅっと
鷲掴みされたように苦しくなり、
息苦しさと目眩がしてきた。

想像しただけでこれだ。

それを目の当たりにしたら
俺はきっと
死にたくなるくらい
絶望に襲われるんだろう。

そう思い始めていたら、
急に、
最近の夏とのやり取りを
鮮明に思い出せてきた。

彼女は毎朝、俺に
帰宅の時間を聞き、
その口調は・・・

どうだったんだろう・・・。

俺のことを「さん」付けし、
丁寧な口調に戻っていたんだ。

と考えると・・・

彼女は無意識に俺との距離を
取り始めていたのではないか?

出逢ったばかりの頃のように。

俺に全力でぶつかってきていい
と言っておきながら、
俺は彼女に何をした?

夏に
なんて可哀想なことを
してしまったんだと思い、
苦しくなり、

頬を一筋の涙が零れた。

必死に彼女は俺に
訴えていたんだ、
でも俺はそれに気づけなかった、

いや、違う。
俺は自分のことばかりで
夏のSOSに
気付こうとしなかったんだ。
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