香りから始まる恋はいかがですか?

あっ、懐かしい香りの
説明を忘れていましたね。

あれは、わたしが、
まだ仕事を始めた頃、

街で、偶然再会した
高校の部活の先輩で、

高校生の頃から
憧れていた男性でした。

その方は、何年も
付き合っていた彼女に
フラれたばかりだといい、

何度か食事に連れていって
もらったりしたのですが、

やはり今までと同様に
例の言葉を残して、
わたしの前から去りました。

それを見送ると
悲しさも切なさも
気持ちの中には、

何も残りませんでした。


この頃すでに

『3度繰り返すことは
無限に繰り返される』
と諭された気がします。

ただ、悲しいことに
彼がわたしの中に
残していったのは、

香りでした。


それからというもの
彼が身に纏っていた
『懐かしい香り』を
無意識に探していたの
かもしれません。


懐かしい香りは、
自己分析したところ、

特定のタバコとサムライと
いう香水が混ざりあっていたんだ、
ということを突き止めました。

突き止めたところで、
懐かしさしか思い出せず
その度に切なくなるのです。

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