あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
彼女は、俺のことを〝あっくん〟と呼んだ。
とても人懐っこくて、こまめに連絡もくれて……自意識過剰かもしれないけれど、本当に俺のことが好きなんだなと感じていた。
「あっくんあっくん」
「なに?」
「今度の土曜日、デートしようよぉ」
ダメ? と言って首を傾げたハル。
今度の土曜日かぁ……
「別にいいけど、来週からテストだって言ってなかったっけ」
「テストだけど、大丈夫!日曜勉強するもん!だからデートしよう!ね⁉︎」
「……ダメ。テスト期間くらい我慢しなよ。進級できなかったら意味ないんだから」
実は、成績がギリギリらしいハル。そんなハルの進級がかかっているテストだ。断ればハルが拗ねたり怒ったりするのも分かっているけれど、俺は悩みに悩んだ結果、ハルのためにそう答えを出した。
すると、予想どおりハルの両頰は段々と膨らんでいく。
「やだ!やだやだ!あっくんとデートしたい!絶対進級するもん!お願いーーっ!」