あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
目の前にいるハルにも、伝えなければいけない。……分かっているけれど、それはできなかった。
「……そうじゃなかったら付き合ってないでしょ。ほら、勉強しないと」
俺は、ズルい。
ハルに自分の事を好きなのかと問われ、彼女と初めて会った日の事を思い出した。
俺は、ハルを利用している。彼女の事はもちろん好きだけれど、それは本当に彼女自身の事を好きなのか? 俺が好きなのは、彼女に重ねている元彼女じゃないのか?
そう、何度も自分に問いかけた。……だけど、答えなんて出なかった。
……俺は、まだ彼女を利用し続けてる。
そう改めて思い知ったのに、彼女にその事は伝えなかった。伝えられなかった。そして、彼女の言葉を軽くあしらった。
「……そう、だね。ごめんなさい。変な事聞いて」
「……ハル……?」
無理をして笑っていたハルの目に浮かんでいた涙が、俺が名前を読んだ瞬間に零れ落ちた。
ハルは「あれ、コンタクトずれちゃった」と言って笑ったけれど、それも嘘だとわかった。
………また同じ事を繰り返した。
そう思ったけれど、その後、ハルは全く今までと変わらなかった。
そんなハルと一ヶ月を過ごすと、彼女はひとつのメッセージだけを残し、突然俺の前から姿を消した────。