あの時の恋にはさよならを、目の前の恋にはありったけの愛を。
断固として外へ出まいとする俺と、無理にでも俺を外に出そうとするハル。
ハルが俺の右腕をぐいぐいと引っ張り、俺はまるで接着剤でもついているかのようにイスからお尻を上げようとしない。
まるで、お菓子売り場から離れたくない子供と、家に帰るよと子供を引っ張る親のようだ。
「もう、敦くん!そんな風にしてるとまた視線集まるよ!」
「でも、嫌だよ。寒いの嫌いだし」
それに、もう既に視線集まってるじゃん……。最悪だ。どうして今日はこうも変な目で見られるかなぁ。
ああ、もう。全部ハルのせいだ。
「そんなに外が嫌なら敦くんの家行きたいなぁー。久しぶりに」
「え、なんでそうなるの」
「えー? だって、外は嫌なんでしょう? でも、ここにい続けるって選択肢はないと思うよ? だって、きっと、みんな敦くんのこと変な人だと思ってる」
「……分かったよ。出よう。でも、家には入れないからね」
確かにハルの言うとおりだと思った。これだけの視線を集めると、流石に居続けられない。
この視線を浴びながらゆっくりと過ごせるほどの神経は、残念ながら持ち合わせていないのだ。